人事評価制度の課題 ~ 評価制度の本当の目的はホームランの打ち方を教えること
熊本県よろず支援拠点 コーディネーターの原川修一です。
「あるべき人事評価制度」について、前々回(平成31年4月17日)、前回(令和元年5月17日)よりお話ししています。
前々回で、従来の人事評価制度での4つの課題を提示し、①の説明をしました。前回は②の説明をしたところです。
① 社員全員を何故S評価にしないのか
※人事評価はSABCDの5段階評価で行います。小学校の通知表と同じで5がSで、1がDという具合です。
② 評価方針は成果主義や目標管理主義でよいのか
③ 評価項目は抽象的なので本人も評価者もわかりにくいと思っている
④ 5年経っても優秀な社員は優秀で、普通の社員は普通なら評価をする意味がない
今回は④について説明します。(③は次回とします。)
《 何年経っても優秀な人は優秀、ダメな人はダメの評価で意味があるのか 》
ここに10人の社員の会社があるとします。その会社に評価制度を導入しました。この評価制度は、優秀な社員とダメな社員を選別し、その結果によって給与を決めたり昇格させたりすることが目的です。
さて、この評価制度を5年間運用したら、その会社の社員はどのように変わっているでしょうか。たぶん、もともと優秀だった人は相変わらず良い業績を残しているでしょう。しかし、ダメな社員だった人は優秀な社員に変身しているでしょうか。たぶんこの人は競争することを諦めて、低い順位に甘んじる選択をしているだろうと推測できます。
5年経っても優秀な人は優秀で、ダメな社員はダメのままなので、次第に評価制度の意味がなくなってしまい、ついには評価制度そのものをやめてしまうことになります。
ほとんどの場合、ダメな社員は評価制度を導入してもその評価制度が「育てるしくみ」となっていない場合、やはり相対的にはダメなのです。
◇ 評価制度の目的はホームランの打ち方を教えること
このような評価制度では、あたかもホームランが打てない選手に向かって「ホームランを打て。打たないと評価は低いぞ。」と言っているだけになります。
そこで、せっかく評価制度を導入するのであれば、「ホームランの打ち方」を教える人事制度、つまり育てることを目的とした資格等級制度や評価制度にすべきです。
◇ 必要な能力と必要な努力を示し、その達成度を評価すること
社員に必要な能力と努力を明確に示します。上司が部下にこう言ったとしましょう。「君、もっと仕事を効率的にしてもらわないと困るよ」。すると部下は、「分かりました。そうします。ところで効率的に仕事をするってどうすればいいんですか?」と聞き返しました。このとき、上司は何と答えられるでしょうか。このときの返事がいわゆるコンピテンシーです。
「明日使う予定の材料を機械の横に揃えてから帰れ。」といった指示が出ればそれがホームランの打ち方となります。
※コンピテンシー
高業績者に共通してみられる行動特性のことです。 「ある職務や役割において優秀な成果を発揮する行動特性」などと定義されています。 何がその人を「仕事のできる社員」にしているのかを明らかにするものです。 社員全体の行動の質を上げていこうというわけです。
そして、そのコツを評価項目として明確に記載し、そのコツを実行する努力をしたかどうかを評価する仕組みとします。
そうすることで、平均的な社員やダメな社員の成果が大きく改善されることが期待できます。例えば、営業マンでは「水曜日には次週のアポが10社すべて取れている。」などを皆で実行するような評価制度とします。謂わば、業務改善項目を評価の基準とすることで、従業員のレベルが上がり、ひいては会社のレベルも上がることになります。
優秀な社員とダメな社員を峻別するような社内で競争させる評価制度ではなく、多くの社員が成長できる評価制度とすることが重要です。
令和元年6月14日 熊本県よろず支援拠点 コーディネーター 原川 修一
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